先天性心疾患

先天性心疾患とは

先天性心疾患の子どもは100人につき1人と、その頻度は高いです。
しかし医療技術の進歩で、近年は先天性心疾患児のほとんどが成人を迎えています。

一言に先天性心疾患と言っても、これだけで膨大な疾患群を含むことになります。
その全てをお伝えすることは難しいですが、一般的な疾患の特徴と当院で主に施行されている手術をお伝えしたいと思います。

  • 心房中隔欠損
  • 心室中隔欠損
  • ファロー四微症
  • 完全大血管転位
  • 成人先天性心疾患

心室中隔欠損

疾患

先天性心疾患のなかでもっとも多いのが、「心室中隔欠損症」です。
身体に血液を送り出す左心室と、肺動脈に血液を送り出す右心室の間の壁に穴が開いている病気です。
小さければ60%程度は自然閉鎖すると言われています。

手術までの流れ

穴が大きい場合、もれた血液は肺動脈へ流れ込み心臓と肺へ負担をかけます。
放置をすると2年以内に肺動脈が痛みきってしまう患者さんがいます。
心臓と肺への負担を取るために、乳児期早期に手術を計画します。

中等度以下の穴で心室中隔欠損が3~4歳以降も残っている患者さんの中には、感染性心内膜炎や大動脈弁閉鎖不全発症予防のために手術が必要になる患者さんがいます。

手術前には心臓カテーテル検査で肺動脈の評価などを行います。

手術

人工心肺装置を使って、心臓を止めている間に、心臓の中に開いている穴を、あて布(Gore-Tex sheet)を用いて閉鎖を行います。
☆3~6歳前後の患者さんでは乳頭線以下4~5cm切開線での手術が可能ですのでご相談ください。

心房中隔欠損

疾患

先天性心疾患のなかで2番目に多いのが、「心房中隔欠損症」です。
静脈血(青い血液)が心臓に返ってきて最初に流入するのが右心房です。
肺で酸素をもらった赤い血液が心臓に返ってくるのが左心房です。

この間の壁に穴が開いています。左心房の方が圧が高いため、血液がもれます。
この結果肺動脈に多くの血液が流れ込む病気です。

手術までの流れ

放置しておくと肺動脈だけどんどん傷んでいくことになります。
肺動脈が痛みきるまでには数十年かかりますが、小学校入学前後に手術を受ける事が多いです。
また、健診の関係で中学校入学直後に手術になる事もあります。
手術前に心臓カテーテル検査は行いませんが、3DCTを撮影しております。

☆現在外科的治療のほかに、カテーテル治療を行う事が可能となっております。順番はまず小児科の循環器専門医で、カテーテル治療が可能か判断してもらいます。

カテーテル治療ができない形は外科的治療が選択されます。
カテーテル治療、外科的治療それぞれに利点と欠点があり、小児科医・外科医双方から意見を聞く事が望ましいと考えます。

外科手術

人工心肺装置を使って心臓が止まっている間に、壁に開いた穴を直接もしくはあて布(自己心膜)を用いて閉鎖することになります。
〈注〉自己心膜とは自分の心臓を包んでいる膜の一部を使用する事を言います。

☆外科的治療では、乳頭線以下4~5㎝皮膚切開、右乳房下縁切開アプローチも選択可能です。

ファロー四微症

疾患

チアノーゼ性心疾患と呼ばれる、身体から返ってきた青い血液が大動脈に流れてしまう病気の中で最も多い疾患です。

右心室の出口が狭く、その結果あぶれた青い血液が心室に開いた穴を通して大動脈に流入します。
右心室の出口は成長と共にさらに狭くなることは分かっています。

啼泣時には「無酸素発作」と呼ばれる低酸素発作を起こすことがあります。
これは右心室の出口が興奮などにより一時的にさらに狭くなることによって起こります。

手術までの流れ

ファロー四徴は全例手術適応となります。
生後すぐに無酸素発作が認められる場合は、シャントと言って人工血管を用いて動脈から肺動脈へ一時的に血液を流す手術を一段階挟むことがあります。

根治手術前には心臓カテーテル検査を行い、肺動脈などを評価します。

☆現在、根治手術は乳児期後期から1歳前後に行われる事が多いです。

シャント手術

人工血管を使って腕に行く血管などから一部肺動脈へ流れるように血流路を作ります。

根治手術

人工心肺装置を使って心臓が止まっている間に、

  1. 心室に開いた穴をあて布で閉じる
  2. 右心室の出口を拡げる

ことで心内修復が行われます。

完全大血管転位

疾患

左心室から出て身体に血液を送る大動脈、右心室から出て肺に血液を送る肺動脈、この二つの大血管が完全に入れ替わっている病気です。
心室中隔に穴が開いているか等によって種類がわかれます。

手術までの流れ

もし心室中隔に穴が開いていない場合、生後左心室の圧が徐々に下がってくるため、手術は生後3週間以内に行われなければなりません。

手術前に心臓カテーテル検査で冠動脈の走行を見たりします。

私達の施設ではおよそ1週間~2週間の間に大血管スイッチ手術が行われます。(穴が開いていてもほぼ同様の手術計画をしております。)

手術

人工心肺装置を使って心臓が止まっている間に大動脈と肺動脈を入れ替えます。
ただ大動脈を入れ替えるだけではなく、冠動脈の入口も新しい大動脈の根本へ移し替えます。

冠動脈の位置や走行によっては、違う手術を選択せざる得ない場合があります。

成人先天性心疾患

当院では、成人心臓血管外科とコラボレーションして、複雑心奇形の成人期症例も治療しております。
例えば、先天性心疾患治療後の弁膜症、大血管疾患に始まり、単心室やEbstein奇形などの先天性心疾患に対しても手術加療を行っております。

人工心肺装置について

心臓の中を直す手術においては人工心肺装置の使用が必須です。
人工心肺装置のしくみは一見複雑ですが、原理としては非常に簡単です!

つまり、「酸素を使い終わった血液を抜き取って、酸素を与えて身体にかえす!」ということです。

☆この装置を使用し、心臓を止めている間に心臓の中を治してきます。

チームの特徴

私は、先天性心疾患の外科治療を担当している中西啓介と申します。
私の外科治療における考え方は、『安全かつ確実に』手術を遂行する事にあります。
特に先天性心疾患の治療においては一つのミスも許されません。
予期しない事態も多く、その瞬間の判断力・決断力が大切です。
当院の先天性心疾患外科治療においては、良好な成績を収めているだけではなく、疾患は限られますが 皮膚小切開手術など患者さんの満足度にも留意した手術も可能です。

皮膚小切開手術を施行した患者さんは術後平均在院日数が「4.3日」と入院期間短縮が得られています。

また、当院の特徴として、日本トップレベルの小児系外科治療チームを有していることが挙げられます。
合併疾患ごとに別の病院に移るなどの必要はなく、全ての子供たちに当院で治療を提供できることを自負しております。
心臓血管外科の話に限っても、順天堂心臓血管外科全体は大学病院の中でも圧倒的な症例数を誇り、新生児期から成人期までをシームレスに治療することが可能です。
興味がある方はセカンドオピニオンなどを含めて、ご連絡をお待ちしております。

外来日=毎週木曜日(午前) 担当医 川﨑志保理・中西啓介

手術実績