低侵襲治療・新しい取り組み

低侵襲心臓外科手術(MICS)

低侵襲手術のイメージ(僧帽弁形成術)

低侵襲心臓手術(MICS:minimally invasive cardiac surgery)

侵襲とは手術時の身体へのダメージのことを指します。
近年小さな皮膚切開での手術(MICS:ミックス)が行われるようになり、当院でも積極的に行っております。
この方法は対象は限られますが、整容面、術後疼痛の軽減、入院期間の短縮など利点も多いアプローチ方法です。

小児心臓外科でのMICS

小児心臓外科における低侵襲心臓手術(MICS)は右側小開胸で行う方法(写真右)と胸骨正中小切開(写真左)の方法で行っております。無輸血、術後5日以内の退院を目指しております。

小児低侵襲手術のご相談に関しては毎週木曜日午前の小児心臓外科外来(担当医 川﨑 志保理、中西啓介)に受診下さい。

  • 適応疾患 心房中隔欠損症
    心室中隔欠損症
  • 適応年齢 2−7歳前後
  • 体重 10-20kg前後

右前胸部切開アプローチ

胸骨小切開アプローチ

成人心臓外科でのMICS

成人におけるMICSは

  • 5-6cmの皮膚切開から小開胸下で行う方法(写真1、図1)
  • 7-10cmの皮膚切開から行う胸骨正中小切開で行う方法(写真2、図2)

があります。

写真1

図1

写真2

図2

内視鏡下僧帽弁形成術

2018年からは内視鏡を用いた僧帽弁手術が保険診療の適応となり、当科でも積極的に行っております。
2021年からは低侵襲心臓手術(MICS)に加えてDaVinciシステムを用いたロボット支援下心臓手術も開始します。

低侵襲心臓手術(MICS)、ロボット支援下心臓手術のご相談につきましては
火曜日午前 浅井徹教授外来
金曜日午前 低侵襲心臓手術外来(担当医 大石、遠藤)
に受診下さい。

新しい大動脈置換術(Sutureless valve、TAVI)

新しい大動脈弁置換術

重症の大動脈弁狭窄症に対して、人工心肺下での大動脈弁置換術が行われてきましたが、高齢化に伴って患者数が増加しています。高齢化や基礎疾患により手術のリスクが高い患者さんに対応するため、より体にかかる負担を少なく、手術時間を短くするために開発されたのがSutureless valveやTAVI(タビ)です。

Sutureless valve

TAVI ⼿術は、局所⿇酔で⾏われ、⼿術時間も1〜2時間で終了できるため体⼒の落ちた80歳以上の⽅にも⼗分に対応できるストレスの少ない治療法です。この治療の問題点は、⼈⼯弁周囲の逆流が少なくなく、徐脈性不整脈の出現でペースメーカが必要になる頻度が外科弁置換術より少し⾼くなります。これらの問題を含めて術後5年以上の遠隔成績が明らかではないという課題はありますがご⾼齢の⽅には極めて有効な治療⽅法です。
しかし、透析患者さんにはTAVI 治療が保険適応とならず、またカテーテル操作が困難な⼤動脈の形態をした⽅にはTAVI 治療が困難で、新たな治療法が必要でした。
今回、⼈⼯弁置換時に⽷で縫合する必要のない、⾦属ステントで固定する新たな⼈⼯弁の使⽤が始まりました。

順天堂では、2018年9⽉からウイーン⼤学病院(Professor Günther Laufer, Professor Alfred Kocher)との打ち合わせを繰り返し、2019年5⽉から新しい⼤動脈弁置換術(Intuity Elite valve system/Rapid deployment valve)を始めました。2019年12⽉末までに27件の⼿術を⾏い、国内3番⽬の⽇本・アジア・環太平洋の指導医資格ならびに指導施設となりました。

⼿術成績は、平均78歳(70歳〜85歳)22⼈の患者さんに単独⼤動脈弁置換術(Intuity Valve System)を施⾏し、⼿術時間平均2時間20分、⼈⼯⼼肺時間70分、術後ICU滞在⽇数平均1.2⽇、術後在院⽇数平均9⽇(7⽇以内退院76%)、在院死亡はなく重篤な合併症は認めませんでした。

⼿術時間が短く、早期にリハビリを開始し退院することができる新たな⼤動脈弁置換術は⼤変有効な治療⽅法になると考えています。

画像提供:エドワーズライフサイエンス株式会社

新しい人工生体弁(Sutureless)による手術計画

TAVI

循環器内科との合同チームで治療を行っております。
大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル的大動脈弁植え込み術

特殊なステントグラフト(Najuta)

最新の胸部ステントグラフト治療

患者さんの術前画像診断にもとづいて血管の屈曲パターンを分析し、1500以上存在する規格の中から選択、使用するというセミオーダーシステムを採用しています。計算式に合わない様な複雑な症例には、3Dプリンターにて立体血管モデルを作成し、実際に留置検証を行ってから使用するという方針をとっているので、(図2)Najutaは遠位弓部瘤に対するステントグラフト治療の安全性と確実性を高いレベルで両立しています。

当科では解剖学的条件がNajutaに有利な症例には当初より積極的に使用する事で、日本でも有数の症例経験数を誇っており、国内はもとより海外からの症例見学施設となっております。

Najuta (開窓型ステントグラフト)

通常のステントグラフトでは開胸手術をせざるを得なかった症例に対し、開窓型ステント(Najuta)を用い、頚部分枝も温存させつつ治療が可能です。

大動脈解離に対してのステントグラフト治療

大動脈解離によって解離腔に流れ込む血流をステントグラフトにより遮断し、血栓化(血が固まる)することにより大動脈解離の進行を予防します。

実際に行った症例では、偽腔(本来の血管腔ではなく裂けてできた所)の方が太くなっていましたが、術後は金属のステントにより真腔(本来の血管腔)の方が大きく広がり、解離前の状態に近く固定されています。

診療体制

当科のステントグラフトチーム
土肥 静之 (腹部ステントグラフト指導医・胸部ステントグラフト指導医)
大石 敦実 (腹部ステントグラフト指導医・胸部ステントグラフト指導医)
遠藤 大介 (腹部ステントグラフト指導医・胸部ステントグラフト指導医)

イタリアからの手術見学

韓国からの手術見学

左心耳切除術

左心耳切除術とは

左心耳切除術は脳梗塞を予防する手術手技です。

左心耳とは、左心房に付いた袋状の部分です。
不整脈(心房細動)を起こした場合に、心臓内に血栓を生じますが、その90%が「左心耳」に形成されると言われています。左心耳は心臓の機能に大きく影響しないことが分かっており、当院では、手術時に同時に左心耳切除術を行っています。

利点

  • 所要時間はわずか5分です。
  • 抗凝固剤を飲まなくて良い、もしくは血液サラサラの程度を抑える事が可能です。

左心耳切除術に対する研究

☆少し難しい内容になります!

心臓手術と併せて、安全かつ短時間で実施できるうえ、脳梗塞に対する予防効果も明らかだったからこそ、当院では国内でいち早く左心耳切除術を取り入れ、本格的に取り組んでおります。

2011年から2017年の期間に当院で実施した心拍動下冠動脈バイパス術1018例を対象に、左心耳切除術を行った574例と左心耳切除術を行っていない444例を比較した研究を行いました。

心拍動下冠動脈バイパス術における同時左心耳切除術は、安全に施行可能であり、かつ術後心房細動患者における脳梗塞の発症を抑制します。

心房細動は加齢とともに増加する頻度の高い不整脈であるため、心拍動下冠動脈バイパス手術において同時左心耳切除術を施行することは有用であると考えられます。

下肢静脈瘤の最先端治療(グルー治療)

下肢静脈瘤にはこれまで抜去切除術(ストリッピング)、高位結紮術、血管内焼灼術(レーザー、ラジオ波)が治療法として広く行われてきましたが、2019年12月より新しく血管内接着剤(グルー)治療が保険適応の治療となりました。
血管内焼灼術とほぼ同じ治療費でより負担が少なく同等の効果が得られる治療を受けることができます。

グルー治療のメリット

  • 針を穿刺する回数が少ない。
  • 麻酔薬、鎮静剤の使用を抑え、高齢者でも手術ができる。
  • 手術後の圧迫療法(弾性ストッキング)が不要。
  • 術後の疼痛や神経障害が少ない。
  • レーザー治療などで問題になる皮膚の熱傷や静脈血栓症を来たしにくい。

グルー治療のデメリット

  • 血管径、瘤(こぶ)の大きい方は適応にならない。
  • 接着剤に対するアレルギーが出ることがある。
  • 日本での長期的な成績がわかっていない。

グルー治療ではシアノアクリレートという血管内接着剤を用いて、静脈瘤の原因となる血管を閉鎖します。接着剤の安全性は認可を受けており、静脈瘤以外にも脳神経外科や消化器内科領域での血管塞栓術に用いられています。

治療は日帰りで、その日から運動や飛行機での移動も可能です。
治療には一定の条件を満たしていることが必要です(レーザー治療などよりもより厳しい条件があります)。静脈瘤専門外来でご相談ください。