ステントグラフト内挿術
1. ステントグラフト内挿術とは
大動脈ステントグラフト内挿術とは通常の心臓手術とは異なり、お胸やお腹を開けるといった大がかりな手術操作を必要とせず、足の付け根の動脈からカテーテルを用いて人工血管を大動脈内に留置して大動脈瘤の破裂を予防する方法です。小さい傷で行えるため、ご高齢の方や体力が低下している患者さんに対して体への負担がとても少なくて済みます。
一般的には、片側もしくは両側の足の付け根からステントグラフトを挿入します。患者さんによっては切らずに実施することも可能で、現在当院では多くの症例で切らずに穿刺のみで治療を行なっています。
当院では大動脈ステントグラフト専門外来を設置し、大動脈瘤の適切な診断・治療を提供するように取り組んでいます。胸部あるいは腹部に大動脈瘤があると言われた方、ご家族に大動脈瘤疾患がありご心配な方、心臓以外にも疾患があって手術のリスクが高いと言われた方は是非当院へご相談ください。
2. 治療実績
当院でのステントグラフト内挿術の治療開始は2009年から行っており、現在までに多くの患者さんが治療を受けられています。胸部ステントグラフト内挿術においては、現在日本で使用することができるカワスミNajuta・GORE TAG Thoracic Endoprosthesis・テルモRelay Plus・Medtronic VALIANT・Zenith TX2 TAA Endovascular全5機種全てにおいて指導医がおり、その患者さんに合った適切な治療を考察し対応させていただきます。術前にしっかり精査を行った上で適応を判断しますが、ステントグラフト内挿術が不適格と判断された場合でも、質の高い開胸手術や開腹手術とのハイブリット手術を行う体制も整っておりますので、患者さん一人一人にあった治療を選択できることが当院の強みです。
3. 特殊なステントグラフト(Najuta)
通常のステントグラフトは適応外で使うことができず開胸手術をせざるを得なかった症例に対し、開窓型ステント(Najuta)を用いることで、頚部分枝を温存した治療が可能です。
Najuta は、患者さんの術前画像診断にもとづいて血管の屈曲パターンを分析し、1500以上存在する規格の中から選択、使用するというセミオーダーシステムを採用しています。計算式に合わない様な複雑な症例には、3Dプリンターにて立体血管モデルを作成し、実際に留置検証を行ってから使用するという方針をとっているので、Najuta は遠位弓部瘤に対するステントグラフト治療の安全性と確実性を高いレベルで両立しています。
当科では解剖学的条件が Najuta に有利な症例には、当初より積極的に使用する事で日本でも有数の症例経験数を誇っており、国内はもとより海外からの症例見学施設となっております。
低侵襲冠動脈バイパス術(MIDCAB)
通常の冠動脈バイパス術とは異なり、胸骨を切開することなく、左前胸部を小さく切開して、心拍動下に冠動脈バイパス術を行います。低侵襲であるため、術後回復が早い点や、美容的観点からメリットがあります。
左冠動脈前下行枝の1本だけの病変である場合や、正中開胸手術が術後回復の観点でリスクになる場合に、良い適応になります。また、左冠動脈前下行枝以外の病変も含む2本以上の病変であっても、MIDCAB と カテーテル治療を組み合わせて多枝への血行再建を行う、ハイブリッド治療も行なっています。
当院での治療の特徴
- 人工心肺を使用せずに、心拍動下に吻合を行うオフポンプ手術(OPCAB)の頻度が高く、合併症リスクを軽減しています。
- 動脈グラフトを多用し、多枝バイパスによる完全血行再建を基本としています。 (治療リスクや対象病変によっては、カテーテル治療を組み合わせたハイブリッド治療も行います。)
- 複雑症例や再開胸手術症例などハイリスク症例にも対応可能です。
- 左冠動脈前下行枝の1枝病変であれば、胸骨正中切開を行わずに左前胸部の小さい傷だけで行う低侵襲冠動脈バイパス術(MIDCAB)も行なっています。
当院では、患者さん一人一人に最適な治療プランを提案し、また質の高い冠動脈バイパス術を提供します。狭心症や心筋梗塞で治療が必要と言われた方は、ぜひ一度当院へご相談ください。